AI時代こそ、
過程が大事なのかもしれない。
最近、そんな問いが自分の中で
生まれている。
今は、調べれば何でも出てくるし、
AIに聞けば、
それっぽい答えがすぐ返ってくる。
「それっぽい」の精度も
日に日に向上している。
仕事でも、モノづくりでも、
これからもっと
「早く・うまく・それっぽく」
結果を出せる時代に
なっていくのだと思う。
便利になっていくこと自体は、
きっと悪いことではない。
面倒な作業を減らして、
本当に向き合いたいことに集中できる。
その意味では、
いい時代になっていくのかもしれない。
でも、少し気になることもある。
過程を飛ばして
結果だけを受け取ることに慣れすぎると、
自分の目で見て、
自分の体で感じて、
自分なりに考える力まで、
少しずつ弱くなるのでは?
AIが答えを返してくれる感覚は、
小中高のころ、
できる友達の宿題を見せてもらって、
答えだけを写していたときに
少し近い気もしている。
答えは埋まる。
提出もできる。
怒られないかもしれない。
でも、自分の力にはなりにくい。
なぜその答えになるのか。
どこで間違えたのか。
どこが分からなかったのか。
理解の過程を通らないまま進むと、
あとでどこかで苦しくなる。
基礎が身につかない。
AI時代にも、
少し似たことが起きているのでは?
少し面倒なこと。
少し遠回りなこと。
すぐに答えが出ないこと。
考える力や、
クリエイティブの力は、
遠回りの途中にある気もしている。
そんなことを考えていたときに
たまたま、熊本県の玉名に行った。
最寄りは新玉名駅だった。
温泉街があることは知っていたけど、
なかなか行けなかった場所だ。
これは、2026年1月24日(土)から
25日(日)にかけての話。
・なぜ玉名に行ったか?
きっかけは、
今年の1月にカフェで知り合った、
玉名出身の人との会話だった。
会話の中で、
玉名にある「つかさの湯」は、
博多ブログさんなら絶対気に入ると思う。
あと、私の地元を知ってほしい。
と、言われた。
今は、検索すればおすすめの場所は
いくらでも出てくるし、
SNSを見ても、
観光地や人気スポットの
情報はすぐに見つかる。
でも、リアルな人から
おすすめされる場所には、
優しさがあるかなと思う。
リアルな人からの
おすすめされる言葉には、
実際に玉名で過ごした
時間や気持ちが乗っている。
場所への温度も滲んでくる。
ただの「人気」ではなくて、
「私は玉名が好き」
という熱量が伝わる。
その熱量に惹かれる。
「つかさの湯」は、
地元の人が自然に集まる場所らしい。
地元の人が自然に集まる場所なら、
自分の夢のヒントになるかもしれない。
夢=カフェみたいなものをつくる
=人が自然に集まる場所をつくりたい
=プラットフォームをつくりたい
夢のヒントを探しに行こう!と思った。
・今回の旅のルール
今回の旅では、
一つだけ制約を設けた。
旅のあいだはWebで調べないこと。
目的は、「つかさの湯」に行くこと。
目的地だけは決まっていた。
でも、目的地以外の情報は、
できるだけ現地に行ってから
発見・体験したいと思った。
Googleマップは使わない。
事前にも、ほとんど何も調べない。
あえて、行く前に、
ネットで知識を入れないようにした。
知識を先に入れすぎると、
逆に新鮮さがなくなる気がしたからだ。
初めて行く場所なのに、
すでに知った気になってしまう。
町の風景を見たときの驚きも、
歩きながら感じる違和感も、
少し弱くなってしまう気がした。
目的地は「つかさの湯」。
でも、目的地以外のことは、
現地で見て、歩いて、聞いて、感じたい。
旅の途中で何に出会うのかも含めて、
「玉名」を感じたかった。
だから今回は、
過程そのものを楽しみたかった。
自分の感覚で旅をしたかった。
何がいいのか。
何が心に残るのか。
自分の目と体で確かめてみたかった。
Webや生成AIと、
あえて少し距離を
取ることで見えてくる価値。
体験自体を自分でつかむ感覚を、
大切にしたいと思った。
・新玉名駅にて
博多駅から新玉名駅へ
九州新幹線で向かった。
新玉名駅で降りたのは、
自分だけだった。
土曜日の遅い時間だったのもあると思う。
でも、観光客で賑わっている感じは、
まったくなかった。
駅に着いてまず、
駅に置いてあった紙の
「玉名旅手帖」を手に取った。
スマホではなく、紙。
紙の冊子を頼りに
旅を始める感じが、
今回の旅に合っていて、
少しうれしかった。
旅手帖を見ると、
「つかさの湯」の場所はだいたい分かった。
ただ、方向的にどちらへ
進めばいいのかが分からない。
しかも、
いつもメモはペンで書いているのに、
この日に限ってボールペンを忘れていた。
ちょうど近くに
GooDayがあったので入ることにした。
GooDayは、
九州ではわりと見かけるホームセンターだ。
ボールペンを買うついでに、
店内が空いていて、
しかも最後の客だったこともあり、
旅手帖の地図を見せながら、
店員さんに
「つかさの湯」の行き方を聞いてみた。
返ってきたのは、
「あそこの大通りを出て、
左にずっと行けば大丈夫ですよ」
という案内だった。
そのあと、
「今から観光ですか?」
という感じで話しかけられた。
玉名では、
観光で来る人が
あまり多くないのかもしれない。
でも、店員さんと少し会話をしたことが、
あとでどこかで話題になる可能性もある。
「今日、観光で来た人がいたよ」みたいに。
Googleマップを
見ながら移動していたら、
店員さんとの会話は、
たぶん生まれなかったと思う。
・星空と道まちがい
言われた通りに
「つかさの湯」へ向かった。
歩いていると、
空には満天の星が広がっていた。
Googleマップを
見ながら歩いていたら、
星空には
気づかなかったかもしれない。
最初からタクシーで
向かっていたら、
星空をちゃんと見ることも
なかったかもしれない。
歩くから気づくことがある。
歩く速度でしか見えないものは、
たぶん結構多い。
そんなことを
思いながら進んでいたけど、
なかなか「つかさの湯」に着かない。
しばらくしてセブンイレブンが見えたので、
店員さんに
「つかさの湯は近いですか?」
と聞いてみた。
返ってきたのは、
思っていなかった答えだった。
「逆ですよ」
と言われた。
どうやら、
いつの間にか道を間違えていたらしい。
来た道を歩いて戻る気力も時間もない。
そこでタクシーを呼ぶことにした。
セブンイレブンの店員さんが、
地元のタクシー会社に電話をしてくれた。
来るまで30分ほどかかると言われた。
待ち時間に、
コーヒーとたばこを買って、
久しぶりにジャンプを
少しだけ立ち読みした。
少年ジャンプを
立ち読みする時間そのものが、
なんだか少し懐かしかった。
少年ジャンプの中に、
ラジオの大喜利コーナーに
投稿するラブコメ漫画があった。
自分もラジオが好きなので、
ラジオとラブコメを
組み合わせているところが新鮮だった。
気になって、漫画の名前をメモした。
『さむわんへるつ』という作品だった。
目的は「つかさの湯」に行くことだった。
でも、待ち時間のジャンプで
『さむわんへるつ』に出会った。
あらかじめAIによって
最適化されたルートの中では、
起こりにくい出会いだと思う。
本来の目的とは
違うものに、
ふと興味を持つこと。
予定になかった作品に、
少し心が動くこと。
昔も今も偶発的な出会いは、
かなり大事だと思っている。
AIは、
目的に対して
最短の答えを返してくれる。
でも、最短ではないからこそ
出会える作品もある。
『さむわんへるつ』は、
そんなことを思わせてくれた
小さな出来事だった。
そしてラジオに
再びハマるきっかけにもなっていく。
・タクシーの中で
しばらくしてタクシーが来た。
乗ると、運転手さんに
「観光ですか?」
と聞かれた。
一眼カメラをぶら下げていたので、
観光客っぽく見えたのだと思う。
やっぱりすぐ分かるらしい。
「珍しいですね」と言われたので、
「観光客はあまり来ないんですか?」
と聞いてみた。
運転手さんは、
かなり率直に話してくれた。
観光客は来ない。
町は正直、元気がない。
若い人は減っているし、
人口も減っている。
昔は温泉街の近くにスナックも
たくさんあって賑わっていたけど、
今は全然だ。
インバウンドが流行っている今でも、
外国人すらほとんど来ない。
話を聞きながら、
頭の中にひとつの問いが生まれた。
資本を持っている人向け、
お金を持っている人向けの
インバウンドビジネスは、
本当に日本の地域を
元気にしているのか。
その問いは、
すぐに答えが出るものではなかった。
でも、気になったのでメモした。
・つかさの湯へ
ようやく「つかさの湯」に着いた。
中に入ると、
地元のファミリーが自然に集まっていた。
観光客向けというより、
明らかに地元の人たちのためにある場所、
という感じがした。
同窓会や宴会も
開かれているらしい。
温泉の湯船の数も多い。
サウナでは、
熊本や九州の高校が出ている試合のとき、
テレビのチャンネルが
固定されることもあるそうだ。
ただの温泉施設ではなくて、
地域の生活の延長にある
場所なんだと分かる。
自分が惹かれるのも、
地元の人の生活に
溶け込んでいる場所なのだと思う。
人が無理なく自然に集まり、
生活の延長として
存在している場所。
玉名に来たかった理由も、
その空気を感じたかったからだ。
・銀座という居酒屋
温泉を出たあと、
何かを食べたくなった。
近くに「銀座」という
居酒屋があった。
いかにも地元の人が集まる居酒屋、
という雰囲気だった。
正直、少し入りづらかった。
でも、
入口に「観光協会推薦」の札があったので、
それなら大丈夫だろうと思って入ってみた。
中に入ると、
地元の人たちでしっかり埋まっていた。
20代から40代くらいが
中心だったと思う。
カウンターに案内されてメニューを見る。
魚もあるし、ピザもある。
思っていた以上にバリエーションが広かった。
ビール、タコチヂミ、
ピザの小、ふぐの唐揚げを注文した。
一人で入るには少し勇気がいる店だった。
でも、実際に入ってみると、
土地の空気に一歩入り込めた感じがした。
居酒屋を出たあと、
近くの足湯にも行ってみた。
足湯にも、
地元の人が自然に集まっていた。
おそらく高校生っぽい人たちが
足湯に入りながら話していた。
聞こえてきたのは、
恋バナっぽい会話だった。
足湯につかりながら恋バナをする。
ものすごくエモい。
青春だなと思った。
でも、
おじさんが長く足湯に入っていたら
少し怪しまれそうな気もしたので、
自分はすぐに出た。
地元の高校生が足湯に集まって、
恋バナをしている。
観光案内には
たぶん載りにくい光景だけど、
玉名の空気を感じるには、
むしろ大事な場面だった気がする。
・最後はWebを
足湯を出たあと、
今度はどこに泊まればいいのか
分からなくなった。
時間的にもだいぶ厳しかったので、
ここで初めてWebを使った。
Booking.comで
空いているホテルを探し、
安く泊まれそうな
熊本駅近くのホテルを見つけた。
熊本駅までの終電に間に合うかどうかも、
Webで調べた。
どうしても効率を求めたい場面では、
Webを使うのは仕方ないと思う。
野宿するとか、
誰かの家に泊めてもらう
みたいな方法も、
たぶん世の中にはあるのだろうけど、
そこまでを
旅のルールにする必要はない。
今回やりたかったのは、
完全にデジタルを
否定することではなくて、
必要以上にWebに頼らずに
旅をしてみることだった。
・過程のこと
AI時代は、
プロセスを飛ばして、
結果だけがすぐに出力される。
これから先、
効率化はもっと進んで、
成果だけを
素早く出せる場面は、
どんどん増えていくのだと思う。
それによって、
本当に大事な仕事や、
コアとなる業務に集中できる。
その意味では、
良い時代に
なっていくのかもしれない。
でも一方で、
プロセスを楽しむことにも、
ちゃんと価値がある気がしている。
少し遠回りをしたり、
道を間違えたり、
人に聞いたり、
自分の目と体で確かめたりする。
考える力は、
遠回りの途中で育つ気がする。
クリエイティブも、
過程の中から生まれる気がする。
AIによってDXされた先に、
何があるのか。
DX=Digital Transformation
(超簡単に言うとデジタル化)
まだ答えは分からない。
ただ、少し面倒なことの中にこそ、
過程そのものを楽しめる価値が
あるのではないかと思う。
ここで言いたいAXは、
Analog Transformation のことだ。
(超簡単に言うとアナログ化)
デジタル化や効率化を
否定するための言葉ではない。
デジタル化やAI活用が進んだあとに、
もう一度、
手触りのある体験や、
自分の感覚で受け取る時間に
価値を見つけ直すこと。
アナログな過程を通して、
考えること、迷うこと、
偶発的に出会うこと。
今の自分は、
そんな意味で
AXという言葉を使いたくなっている。
ただ成果を出すだけではなく、
その過程で何を感じたか。
どう考えたか。
何が心に残ったか。
体験の中で生まれた感覚を
大切にする視点のことを、
今の自分は
AXと呼びたくなっている。
効率と、遠回り。
成果と、過程。
そのバランスを
大事にすることが、
AI時代には必要なのかもしれない。
まだ答えは全然分からない。
でも今言えるのは、
自分が楽しいと思えること。
好奇心に素直になること。
それを大事にしていきたい、
ということ。
たぶんこれからも、
少し面倒でも、
ちゃんと自分で
感じられるほうを選びたい。
動け、好奇心。
Webを使わずに行った、
玉名の夜には、
満天の星があった。
だからエンディングは、
ラジオみたいに、
ここで一曲、坂本九で
見上げてごらん夜の星を。
旅の写真アルバム
共有期限:2026/5/20
