先日、昔ながらの喫茶店に行った。
今回で二回目くらいだったと思う。
福岡市の水鏡天満宮横丁の
古い建物の中にある、
小さなお店だ。
店名は「百貨蔵」で
年配の女性店主さんが
一人で切り盛りをしている。
昔ながらの食器が並び、
本棚には常連さんたちが
置いていった本が並んでいる。
本は貸してもらえるらしい。
店内には看板猫がいる。
名前は「チャー坊」。
チャー坊は人に慣れていた。
気づけば椅子の上にいたり、
丸くなっていたりする。
店の一部というより、
昔からそこにいる住人のようだ。
コーヒーを飲み、
裏メニューのように出してくれた、
蜂蜜トーストを食べた。
トーストの値段は破格の百円で
食パンも蜂蜜も
仕入先にこだわっているみたいだ。
もちろん、美味しい。
美味しい蜂蜜と美味しい食パンの
組み合わせはズルいよね。
休日の時間がゆっくり流れた。
そのあと、店主さんと少し話した。
近くで都市開発が進んでいて、
この場所を離れないといけないらしい。
新しい場所は用意されるという。
だから聞いた。
「新しい場所で続けるんですか?」
店主さんは少し笑って、
「続けないと思う。もう、私も歳だしね」
その言葉が、少し残った。
都市開発は悪いことではないと思う。
街は変わるし、便利になる。
新しい人も集まる。
その変化で救われる人もいる。
でも、その変化の途中で、
静かに終わっていく場所もある。
帰り道、考えた。
人は、
何かを失いそうになってから、
あるいは失ってから
気づくことが多い。
閉店のお知らせを見てから、
もっと行けばよかったと思う。
好きだった番組が終わってから、
もっと見ればよかったと思う。
好きだったアイドルの
解散や活動終了を知ってから、
もっと応援しておけば
よかったと思う。
でも、本当は終わる前に
気づけた方がいい。
だから、
好きな場所には、
終わる前に何回も行こうと思った。
コーヒーを飲みに。
蜂蜜トーストを食べに。
チャー坊に会いに。
本棚を眺めに。
そして帰る前に、
店主さんへ伝えようと思う。
「この店、好きです」
と言いたいけれど、
たぶん、
恥ずかしくて言えない。
だから次に行ったときは、
コーヒーを飲んで、
蜂蜜トーストを食べて、
猫に会って、
本棚を眺めて、
最後に小さく、
「また来ます」
くらいは言えたらいいかな。
今回は少しだけ
物語みたいに書いてみた。
なくなる前に
何か残したかった。
写真でもなく
動画でもなく
自分は文章で。
文章に残すというのは、
そういうことなのかもね。
終わる前に、行こう。
百貨蔵 へ。
チャー坊に会いに。
※本記事をもとに内容を再構成した
原稿を西日本新聞の読者投稿欄
「こだま」へ投稿済です。
追記
2026/7/10(金)
西日本新聞の朝刊にて
本ブログの内容がもとにした
エッセイが掲載されました。
ご担当いただいた記者の方、
本当にありがとうございました。


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